St Lukes Clinic
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犬も歩けば喰われないの巻


 アメリカに来て、様々な考え哲学に出会ったため少々の事では驚かなくなった。

そんな私でも驚いたのが飼っていた犬の持っている哲学。


 犬に哲学 なんてあるのかって? 犬は犬なりの考え方と哲学がある。例えば、愛とは何か?と聞かれると皆さんはどう答えるだろうか?人によりいろいろな哲学が聞ける。だが、家で飼っていたラブラドールのヤマト君によると、愛とは餌である。


 単純明快な哲学ではないか。愛があるから餌を与える。

だったら 餌は愛ではないか。 愛に餓えわくときには、餌をもらう。すると幸せになれるではないか。

だから、もっと愛をくださいとは、もっと餌をくれと同義である。

なんだか、どこかが混線しているような考え方だが、そこはそれ、犬の考える事だから、ちょっと変な所もあるが、この哲学で何らの迷いも無く人生(犬生?)を貫いて生きているから、変な人間より立派である。


 ヤマト君は子犬の時に家に来たのだが、ある程度大きくなると学校におくった。学校といっても、Obedience schoolで、犬のためのしつけの学校があるのだ。

土曜日の午後などに、公園に集まって犬の訓練をおこなう。賢そうな犬が飼い主と一緒にずらりとならぶ。そして、最初はコーンとよばれる道路工事なんかで使う標識の間をジグザグに歩く訓練だ。

だが、家の犬は、道路標識一つ一つにおしっこをかけて廻ったあげく、皆の前で大便をした。

 こんなに恥ずかしかった事はない。ハハハと笑われて、這々の体で逃げ帰った。結局、家の犬は学校を落第となってしまった。


 このヤマト君が死ぬ程苦手なのが、家に出入りしている大工のフィリピン人のお

じさん達である。

 朝、工事の為、フィリピンのおじさん達がくる車の音がするだけで、パニックに陥り、ぶるぶる震えて、果てはおしっこを漏らす。フィリピンのおじさん達は、無口で正直なよい人たちなのだが、どういう訳か大嫌いで、怖くてしかたがない。


朝、家の中から吠えてみるが、家族は全員仕事や学校がある。

"じゃ、ヤマト君、しっかりお留守番よろしくね。”といって全員出払ってしまう

と、あとはいるのは怖いフィリピンのおじさん達だけである。敵と一 緒に時間を過ごさなければならない。だったら一人で敵から離れて毅然としていればよいのに、犬は寂しいのが嫌いである。孤独より敵の方がまし、という訳で、日中はフィリピンのおじさん達の後をついて廻る。そしてさんざん恩を受けていながら、夕方家族が帰ってくると俄然また元気を取り戻り、家の中から吠える。

”もう、二度とくるなよ” という感じで吠えまくるのだが、フィリピンのおじさん達は明日も又、来るのだ。


ある時、フィリピンのおじさんが可愛い子犬を連れてきた。

なんでも家の犬が8匹子犬を産んだそうで、その中の一匹を連れて来ていたのだ。まだ、目が開かないくらいの子犬で、おじさんは大変かわいがって、自分のお弁当を分けて食べさせていた。実に、微笑ましい光景だった。


 数日後、再び会った時、子犬の事を聞いてみると、子犬は6匹になったとの事。

その又数日後に聞くと子犬は5匹になったとの事。

どうも、すこしづつ数が少なくなっているではないか。また数日するとまた数が

減る。とうとう2匹になり1匹となり、最後は全部居なくなったとの事。

人にあげたのか、それとも病気で死んだのか、聞くのだが、この人たち、もともとひどく無口である。また、英語もちょっとおかしい。一体、子犬 はどうしたんだ、と尋ねても、無言で前方をじっとみている。なるほど、家の犬が怖がる訳だ。


一体、子犬はどうしてしまったのだろう?


内科医 小林 恵一

聖ルカクリニック

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小林 恵一、M.D.,

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